「終末のフール」伊坂幸太郎新作、終末のフール読みました。 冬眠のガール描きましたが、一番好きな話は篭城のビール。
世界があと3年で終わってしまうとしたら…、 あなたはどうやって過ごしますか? 全8編の微妙に韻を踏んだ章タイトルが小気味のいい短編集。
・終末のフール 絶縁した娘と復縁を図ろうとする不器用な父親の話
「あなたは、兄貴のすごさを分からない馬鹿だ」
・太陽のシール 新しい命を前にして悩む優柔不断の男の話
「試されている気がするんだ」
・篭城のビール マスメディアに殺された妹の復讐を果たそうとする兄弟の話
「おまえが、小惑星で俺たちと一緒に死ぬなんて許せねえんだよ」
・冬眠のガール 思い立ったように彼氏を作ろうとする天然娘の話
「それなら一人で冬眠します」
・鋼鉄のウール 世界の終わりを知ってもなお鍛錬を続ける格闘家と少年の話
「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」
・天体のヨール 妻が殺され自殺を図る男と天体マニアの友情の話
「もちろん、望遠鏡を覗いてるよ」
・演劇のオール 失った者を補うために多くの家族を演じる女の話
「わたし嘘つくの、うまいから」
・深海のポール マンションに櫓を作る父親とレンタルビデオ店長の話
「あんな遠くから洪水がここまで来るのかな?」
「終末」って…世界の終わりのくせに「週末」みたいなゴロでなんだかのん気だなあと思ってたのですが、そんなにのん気な設定でもありませんでした。みんな家族を失っていたり、買い物をする店が限られていたり、警察が機能していなかったり、混沌とした世界の中で生きる住人達の話です。暗くなりがちなテーマですが、伊坂節は健在で、物語は軽やかで、どこかユーモラス。さわやかな語り口調に、実際の世界の終わりを考えさせる重さはないですが、じわりと染み込んでくるそれぞれの生き方に希望を感じます。
死の物語ではなく、これは終わりに向かう生の話。
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